夜の洗面所の鏡の前で、あごに赤く腫れたニキビを見つけ、触るとズキッと痛む。
そんな場面で、話題の成分を使ってよいのか迷いませんか?
ナイアシンアミドは、皮脂の分泌量、赤み、バリア機能(=外からの刺激を防ぎ、水分を保つ働き)の3方向から肌環境を整える成分として研究されています。ただし、ニキビへの効果を調べた臨床研究の多くは医薬品としての条件で行われており、化粧品で同じ結果が得られるとは限りません。この記事では、研究でわかっていること・わかっていないこと、ニキビの種類別の向き不向き、濃度の選び方、使い方、皮膚科に相談する目安を整理します。
ナイアシンアミドは肌のどこに働く?3つの作用
【結論】ナイアシンアミド(ビタミンB3の一種)は、皮脂の分泌量、赤みの元になる炎症反応、乾燥によるバリア機能の低下に関わる面から研究されている成分です。ニキビそのものを治す成分ではありません。
1. 皮脂の分泌量に関する研究結果
日本人100名を対象とした二重盲検試験(=使う人にも評価する人にも、どちらの製品かを伏せて行う試験)では、2%ナイアシンアミドの使用2週間後と4週間後に、顔の皮脂排出量(一定時間に皮脂腺から出る皮脂の量)が低下したと報告されています。一方、同じ論文に含まれる白人30名の6週間の試験では、皮脂排出量に統計的に意味のある変化(=偶然の差ではないと判断できる変化)は見られませんでした(Draelos ら, 2006)。試験の対象と期間で結果が一致していないため、皮脂の分泌への働きは条件によって差があると考えられます。この試験で確認されたのは皮脂量の変化までで、毛穴の見た目やニキビの改善は評価されていません。
2. 赤みの元になる炎症反応への働き
ニキビの赤みは、毛穴の中でアクネ菌(=皮膚に常在し、炎症に関わるとされる細菌)が増え、皮膚が炎症反応を起こすことで生じます。培養したヒトの表皮細胞(=表皮の大部分を占める細胞で、ケラチノサイトとも呼ばれる)を使った実験では、ナイアシンアミドがアクネ菌による炎症性物質(=炎症を起こす細胞を呼び寄せる情報伝達物質のIL-8)の産生を抑えたと報告されています(Grange ら, 2009)。これは試験管内(in vitro)の実験で、人の肌に塗って同じことが起きると確認されたわけではありません。
3. 乾燥によるバリア機能の低下との関わり
培養したヒトの表皮細胞(=表皮の大部分を占める細胞で、ケラチノサイトとも呼ばれる)を用いた研究では、ナイアシンアミドが角質層(=皮膚の最も外側にある層)のセラミド(=角層の水分を保つ脂質)などの合成を高めることが報告されています(Tanno ら, 2000)。これは細胞レベルの実験の結果であり、ヒトの肌で同じ変化が起きるかどうかは、この研究だけでは確かめられません。乾燥が進むとバリア機能(=外からの刺激を防ぎ水分を保つ働き)が低下し、肌荒れしやすくなると考えられています。乾燥によるバリア機能の低下が気になる肌では、保湿ケアで検討される理由の1つと考えられています。
研究でわかること・わからないこと!化粧品と医薬品は何が違う?
【結論】「ニキビに有効」とされた研究は、医薬品(外用薬)の条件で行われたものが中心です。市販の化粧品に同じ濃度・同じ効果が当てはまるとは限らず、化粧品では「ニキビを治す」とはうたえません。
臨床研究の条件を確認する
- Shalita ら(1995):中等度の炎症性ニキビの患者76名を対象に、4%ニコチンアミド(=ナイアシンアミドと同じ成分)ゲルと1%クリンダマイシン(抗菌薬)ゲルを1日2回・8週間使って比べた二重盲検試験で、医師の総合評価や発疹数などは両者で同程度だったと報告されています。
- Walocko ら(2017):複数の研究をまとめたレビュー論文で、ナイアシンアミドを扱った臨床研究10件のうち、外用で行われた8件では、6件でニキビの減少、または標準的な治療と同程度の結果が報告されていたと整理されています。一方で、研究の数が限られており、著者らは比較試験や長期の試験がさらに必要だと結論づけています。
読み取れるのは「医薬品として設計された4%前後の外用で、一定の改善が報告された研究がある」までです。ドラッグストアや通販の美容液が同じ処方・同じ使い方で同じ結果になる、という証拠にはなりません。日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡治療ガイドライン」では、標準的な治療としてアダパレン(=毛穴の詰まりを防ぐ働きをもつレチノイド系の外用薬)や過酸化ベンゾイル(=殺菌作用をもつ外用薬)、抗菌薬などの医薬品が挙げられています。
ニコチンアミド・ニコチン酸アミド・ニコチン酸の違い
医薬部外品(=国が効能を承認した有効成分を配合し、効能表示ができる製品)でも、ナイアシンアミドを配合していれば必ず「ニキビを防ぐ」という効能表示があるわけではありません。効能は有効成分と承認内容ごとに決まるため、パッケージの効能表示を確認してください。詳しくは ナイアシンアミドの効能とは?4つの働きと医薬部外品の見方・肌質別の選び方 で解説しています。
なお、サプリメントなど内服については ナイアシンアミドサプリの副作用とは?フラッシングや摂取量の注意点 を参照してください。
ニキビの種類別に見る向き不向き4つ
【結論】ナイアシンアミドは、皮脂や乾燥が気になる肌の保湿ケアの一つとして検討できる成分です。ニキビそのものへの効果を化粧品で期待するものではなく、強い炎症や膿をもつニキビは皮膚科での治療が優先になります。
| ニキビの状態 | ナイアシンアミドとの相性 | 考え方 |
|---|---|---|
| 白ニキビ・黒ニキビ(毛穴の詰まり) | 皮脂・乾燥の状態に応じた保湿ケアの一つ | 毛穴の詰まりそのものへの効果は化粧品では扱えない。皮脂や乾燥が気になる肌の保湿ケアとして、洗顔の見直しと併用する |
| 赤ニキビ(炎症あり) | 化粧品でのケアは対象外 | 炎症に関わる働きは試験管内の報告のみで、人の肌での効果は確認されていない。赤みやかゆみが出た場合は使用を中止し皮膚科へ |
| 黄ニキビ・しこり・痛みが強いもの | 向かない | 化粧品での対応範囲を超える。皮膚科で治療を受ける |
| 大人ニキビ(乾燥+皮脂) | 皮脂・乾燥の状態に応じた保湿ケアの一つ | 乾燥でバリア機能が低下しやすい肌の保湿ケアとして選ぶ。ニキビそのものへの効果は期待しない |
ニキビ跡の赤みや色素沈着(=皮膚に色素が残り、色がついて見える状態)についても、ナイアシンアミドで消えるわけではありません。跡のケアは 赤いニキビ跡に合う美容液の選び方|色素沈着との違いと4つの成分基準 が参考になります。種類ごとの原因は 白ニキビができる原因と正しいスキンケア|洗顔・保湿・成分選びの基本 で確認できます。
失敗しない選び方!濃度と表示で見る3つの基準
【結論】ニキビが気になる肌では、低めの濃度から始め、香料やアルコールなど他の配合成分も含めて刺激になりにくい製品を選ぶことが、失敗を避けるための一つの方法です。濃度が高いほど効果が高いとは限りません。
濃度別の詳しい選び方は ナイアシンアミド美容液の選び方と使い方!失敗しない4つの基準 を参照してください。
使い方と効果を判断するまでの期間は?
【結論】洗顔と化粧水のあとに少量から塗り、朝は日焼け止めを重ねます。変化の判断は最低でも4〜8週間、肌のターンオーバー(=角層が入れ替わる周期)を目安に行います。
基本の手順
- 洗顔:ぬるま湯で皮脂と汚れを落とす
- 化粧水で水分を補う
- ナイアシンアミド美容液を少量(1〜2滴程度)なじませる
- 乳液やクリームで保湿する
- 朝は日焼け止めで仕上げる
初めて使う場合は、二の腕の内側などでパッチテスト(=少量を肌に塗り、赤みやかゆみが出ないかを確かめる試し塗り)をし、顔には週2〜3回から始めて問題がなければ毎日に増やします。ニキビのある部分には、こすらずに指の腹で押さえるようになじませてください。
変化を判断する目安
- 2週間:赤み、ヒリつき、かゆみが出ていないかを確認する時期。出た場合は中止する
- 4〜8週間:皮脂の出方や乾燥感、新しいニキビの出方に変化があるかを見る時期
- 8週間を超えても変化がない、または悪化している場合:製品が合っていない可能性があるため、使用を見直し皮膚科に相談する
併用するときの考え方
レチノール(=ビタミンAの一種で、肌のターンオーバーに働く成分)との併用は ナイアシンアミドとレチノールの併用は可能?相性の考え方と注意点、ビタミンCとの併用は ナイアシンアミドとビタミンCは併用できる?配合の考え方と正しい順番 で解説しています。ニキビ肌では、新しい成分を一度に2つ以上増やさないほうが、肌の反応を判断しやすくなります。
やめるべきサインと皮膚科に相談する目安
【結論】使用後に強い赤み・かゆみ・ヒリつきが出たらすぐ中止し、膿をもつニキビやしこり、跡が残りそうな炎症が続く場合は、化粧品でのセルフケアを続けず皮膚科に相談してください。
やめるべきサイン
- 塗った直後から顔が熱くなる、赤くなる
- ピリピリとした刺激や、かゆみ、小さなブツブツが増える
- 新しいニキビが明らかに増える
- 乾燥が進んで皮むけやつっぱりが出る
使い始めの肌荒れについては ナイアシンアミドで好転反応は起きる?赤み・ピリピリの理由と正しく見極める4つの対処法 も確認してください。
皮膚科に相談する目安
- 黄色い膿をもつニキビや、痛みの強いしこり状のニキビが続く
- 赤ニキビが顔全体に多数できている
- 8週間セルフケアを続けても変化がない
- ニキビ跡がへこみ(クレーター)になりそう
赤ニキビで迷う場合は 赤ニキビは皮膚科と市販薬どっちを選ぶ?判断基準と違いを解説 を参考にしてください。
ナイアシンアミドとニキビに関するよくある質問(FAQ)
Q1. ナイアシンアミドはニキビの治療に使えますか?化粧品と医薬品では何が違いますか?
A. 化粧品では「ニキビを治す」とはうたえません。医薬品の条件では改善を示した研究がありますが、化粧品で同じ効果が得られるとは限りません。(詳細)
医薬品の臨床試験では、4%ニコチンアミドゲルが1%クリンダマイシンゲル(抗菌薬)と同程度の結果を示したと報告されています(Shalita ら, 1995)。これは医薬品の条件での結果であり、市販化粧品の効果を保証するものではありません。化粧品は、皮脂・乾燥・バリア機能を整える目的で使うスキンケアとして考えるのが一般的です。
Q2. ニキビ肌の場合、ナイアシンアミドは何%から使い始めればよいですか?
A. 研究で使われた2%や4%を参考に、低めの濃度から試すのが一つの目安です。(詳細)
皮脂排出量の試験では2%、ニキビの臨床試験では4%が使われています。高濃度ほど効果が高いと示した研究は確認できていないため、低めの濃度から始め、肌の様子を見ながら検討してください。
Q3. ナイアシンアミドとレチノールやビタミンCは一緒に使えますか?
A. 製品の設計によります。併用できる場合もありますが、ニキビ肌では一度に増やさないことが大切です。(詳細)
併用で刺激を感じやすい場合は、朝と夜で使い分けたり、使用頻度を減らしたりします。まず1つずつ試し、肌の反応を確認してください。
Q4. ナイアシンアミドを使って赤みやかゆみが出た場合はどうすればよいですか?
A. すぐに使用を中止し、洗い流して保湿だけの最小限のケアに切り替えます。(詳細)
症状が数日続く、腫れる、広がる場合は皮膚科に相談してください。使用した製品名と成分表示を持参すると原因の特定に役立ちます。
Q5. ニキビにナイアシンアミドを使っても改善しない場合、皮膚科を受診する目安はありますか?
A. 8週間使っても変化がない、または悪化している場合や、膿・しこり・強い痛みがある場合は受診を検討してください。(詳細)
炎症が強いニキビは跡が残りやすいため、早めに治療を受けることが大切です。皮膚科ではアダパレン(=毛穴の詰まりを防ぐ働きをもつレチノイド系の外用薬)や過酸化ベンゾイル(=殺菌作用をもつ外用薬)、抗菌薬などの外用薬をはじめとした治療が選択できます。
まとめ|ナイアシンアミドは「ニキビを治す成分」ではなく、皮脂・乾燥ケアの一つとして検討できる成分
ナイアシンアミドは、皮脂の分泌量、赤みの元になる炎症反応、バリア機能の3面で研究されていますが、ニキビへの改善を示した臨床研究は医薬品条件のものが中心です。
- 働き:皮脂・炎症・バリア機能の3つの面から肌環境を整える
- 研究の範囲:医薬品として設計された4%ゲルの試験で、抗菌薬と同程度の結果が報告されているが、化粧品で同じ結果が得られるとは限らない
- 種類別:皮脂や乾燥が気になる肌では、保湿・皮脂ケアの一つとして検討できる。膿・しこりは皮膚科が優先
- 選び方:低めの濃度から、配合成分と効能表示を確認する
- 判断の目安:4〜8週間。変化がない・悪化したら皮膚科へ
肌の変化には個人差があり、すぐに結果が出るものではありません。無理のないペースで続けながら、肌の反応を確認してください。
※本記事は一般的なスキンケア情報を目的としており、特定の効果効能を保証するものではありません。肌状態に不安がある場合は、皮膚科専門医へご相談ください。